教えて「付き添い白書2025」 Vol.2 病院編

「病院は、付き添いをどう考えている?」全国242の医療機関への調査から見えてきた、小児病棟のいま
前回の「Vol.1付き添い家族編」では、子どもの入院に付き添う家族が、どのような環境で過ごしているのかをご紹介しました。
「眠れない・食べられない・目を離せない」生活が続き、体調を崩してしまう人も少なくありません。経済的な負担も大きく、いまも多くの家族が厳しい状況に置かれています。
では、病院側は「付き添い」をどのように捉えているのでしょうか。
キープ・スマイリングでは2025年、全国のこども病院・小児病棟など242の医療機関を対象に、「小児の入院付き添いに関する病院実態調査2025」を実施しました。
調査から見えてきたのは、病院側も付き添い環境の改善が必要だと感じている一方で、人材不足や財源不足など、病院だけでは解決できない課題を抱えているという現実でした。
今回は、その中から特に重要なポイントをご紹介します。
POINT①
多くの病院が「家族に看護の代替をさせたくない」と考えている

まず、病院は付き添い家族にどのような役割を期待しているのでしょうか。付き添い家族に期待する役割として、最も多かったのは「精神的サポート」で98.8%。子どものそばにいて安心感を与えることは、付き添いの大切な役割のひとつです。
一方で、「事故防止のための見守り」73.6%、「療養上の世話」58.3%、「診療補助」31.0%なども挙げられました。
そして、「付き添い者に看護の代替をさせる必要がない環境が整っているか」という問いに対しては、82.2%の病院が「十分とはいえない」と回答しています。
つまり、病院側も「家族には家族だからこそできる精神的なサポートを担ってほしい」と考えながらも、現実には家族に頼らざるを得ない場面があることがわかります。
家族には看護の代替をしてほしいわけではない。でも、お願いせざるを得ない。このギャップが、付き添いをめぐる大きな課題のひとつです。
POINT②
夜になると、支援する人が少なくなる

今回の病院調査で、特に大きな課題として見えてきたのが、「夜間の支援の空白」です。
日中は、病棟保育士を配置している病院が76.2%ありました。ところが夜間になると、93.8%の病院が病棟保育士を配置していません。看護補助者についても、夜間に配置していない病院は65.1%にのぼりました。
一方、付き添い家族側の調査では、子どもの夜間ケアについて、「常にある」41.3%、「結構ある」27.1%と回答しています。
つまり、家族の負担が大きくなりやすい夜間に、支援する人が少ないという状況が起きています。
夜、子どものケアや見守りを一人で担いながら、十分に眠ることもできない。付き添い家族の「眠れない」「体調を崩してしまう」という問題の背景には、こうした病棟の人員配置も関係しています。
POINT③
「人が足りない」のは、看護師だけではない

「病院の人手不足」と聞くと、看護師を思い浮かべる人が多いかもしれません。
今回の調査では、看護師だけでなく、看護補助者や病棟保育士、CLS(チャイルド・ライフ・スペシャリスト)など、子どもと家族を支えるさまざまな職種で人材不足が明らかになりました。
看護師については、配置基準を満たしている病院が91.1%だった一方で、実際に「必要な人数に対して足りていない」と感じている病院は45.2%。制度上の基準を満たしていても、現場が「十分」と感じているとは限らないことがわかります。
看護補助者では、「現在の配置人数が充足していない」62.1%
病棟保育士でも、「配置人数が充足していない」55.8%
さらに、CLS・子ども療養支援士・HPSなどの専門職を配置していない病院は75.0%。
その理由としては、「予算の関係上難しい」「報酬上の評価がない」「人材確保が難しい」などが挙げられています。
子どもと家族を支えたい。そう思っていても、必要な人材を確保すること自体が難しい。これが、小児医療の現場が抱える現実です。
POINT④
ベッドや電子レンジは増えている。でも、それだけでは「安心して過ごせる」には届かない

この数年で、付き添い環境にも変化が見られます。
たとえば今回の病院調査では、付き添いベッドを用意している病院 74.4%、電子レンジを設置している病院 87.2%など、環境整備が進んでいることがわかりました。
一方で、付き添い家族の調査を見ると、80.0%が「熟睡感がない」80.2%が「病院食の提供がない」と回答しています。病院に設備が整ってきても、それがそのまま「家族が安心して過ごせる環境」につながるとは限りません。
たとえば、病院に付き添いベッドがあっても、「寝具が硬い」「ベッドが狭い」「腰が痛くなる」といった困りごとがあります。また、子どもの夜間のケアやアラーム音、病室の狭さなど、設備だけでは解決できない問題もあります。
「ある」ことから、「実際に使いやすい・休める」ことへ。次のステップとして、そんな視点も必要になりそうです。
POINT⑤
国の制度はできた。でも、病院の3分の1は「補助金を知らない」

付き添い環境をめぐっては、この数年で制度も動き始めています。
2024年度の診療報酬改定では、付き添い家族への食事・睡眠への配慮が算定要件に明記されたほか、看護補助者や保育士の配置を評価する加算が新設されました。
さらに2025年には、こども家庭庁による「入院中のこどもの家族の付添い等に関する環境改善事業」が始まり、付き添い家族のための寝具や電子レンジ、スペースの整備などに補助が出るようになりました。
ところが今回の調査では、33.3%の病院が、この補助金制度を「知らない」と回答。
制度を知っていても、「申請方法がわからない」「対象範囲がわからない」といった理由で活用できていないケースもありました。
制度をつくることは大きな一歩です。でも、それが現場に届き、実際の環境改善につながって、初めて家族の生活は変わります。
病院も、変えたいと思っている。今回の調査で忘れてはいけないのは、病院側も「付き添い環境を変えたい」と考えているということです。
実際、95.5%の病院が「親の付き添いは子どもにプラスの効果がある」と回答しています。子どもにとって、家族がそばにいることには大きな意味がある。それは、病院側も理解しています。
一方で、
「人が足りない」
「予算が足りない」
「改善するための時間がない」
「どう変えればいいかわからない」
そんな声もあります。
つまり、病院と家族が対立しているということではありません。家族も、病院も、よりよい環境が必要だと感じている。それでも、人材・財源・制度などの壁があり、病院だけでは解決できない課題が残っているのです。
「付き添う」ことを、家族だけに背負わせないために。子どもにとって、親や家族がそばにいることは大きな安心につながります。だから、「付き添いをなくせばいい」ということではありません。
大切なのは、
付き添いたい家族が、安心して付き添えること。
付き添わない選択をした家族が、安心して離れられること。
そして、そのために必要なケアを、家族だけに背負わせないことです。
今回の調査から見えてきたのは、付き添い環境の改善には、病院だけでなく、国や自治体、企業、そして社会全体で取り組む必要があるということでした。
キープ・スマイリングは、付き添い家族への生活支援に加え、病院の環境改善を後押しする取り組みや、調査・啓発、政策提言にも取り組んでいます。
子どもが入院しても、子どもと家族のみんなが笑顔を失わないでいられるように。
「安心して付き添える、安心して離れられる」環境を、一緒につくっていきたいと考えています。
【調査概要】
調査対象:入院中の子どもに付き添った経験のある家族1,198名
調査時期:2025年11月~2026年1月
調査主体:認定NPO法人キープ・スマイリング
※本記事では「付き添い白書2025」より、主に付き添い経験者1,198名を対象とした調査結果を紹介しています。



