教えて「付き添い白書2025」 Vol.1 付き添い家族編
「付き添い」は、家族にどんな負担をもたらしている?「付き添い白書2025」から見えてきた、付き添い家族を取り巻く環境とは

子どもが入院すると、「できるだけそばにいたい」と思うご家族は少なくありません。
一方で、実際の付き添い入院では、仕事やきょうだいのこと、家族自身の体調など、さまざまな事情を抱えながら、病院で長時間過ごすことになります。
では、いま付き添いをする家族は、どのような環境に置かれているのでしょうか。
キープ・スマイリングでは2025年、2022年に続く2回目の調査を実施。この3年間で診療報酬の改定や国の補助制度の創設など、付き添い環境をめぐる制度は少しずつ動き始めています。
その一方で、今回の調査からは、付き添い家族が抱える負担がなくなったわけではないことも見えてきました。
ここでは、「付き添い家族を取り巻く環境」にスポットを当てて、4つのポイントからご紹介します。
POINT①
「付き添うか、付き添わないか」を、家族は選べている?
→状況は少しずつ改善しているもののまだ3/4は付き添いせざるを得ない状況

まず大きな課題となっているのが、そもそも「付き添う・付き添わない」を家族自身が選択できているのかということです。
今回の調査では、73.5%が「付き添いを選べなかった」と回答しました。2022年は79.0%だったため、6.5ポイント改善しています。
また、75.0%が「病院から付き添いを要請された」と回答しています。2022年の79.1%からは4.1ポイント減少しましたが、それでも約4人に3人という高い割合です。
つまり、少しずつ変化は見られるものの、現在も多くの家族が「自分の希望や家庭の事情に合わせて付き添い方を選ぶ」というより、病院からの要請などによって、付き添いをせざるを得ない状況に置かれていることがわかります。
もちろん、入院中の子どもにとって、家族の存在が大きな安心につながることがあります。
だからこそ大切なのは、「付き添いたい」という家族の思いと、「付き添わなければならない」という状況を分けて考えること。
家族が「付き添いたい」と思ったときには安心して付き添え、事情があって「付き添えない」ときにも安心して離れられる。
そんな選択肢があることが、これからの付き添い環境には求められています。
POINT②
「食べられない・眠れない・目を離せない」は、どうなった?
→「十分眠れない」が約8割、食事は約3割が「1日2回以下」とまだまだ不十分

付き添い家族の負担を考えるうえで、キープ・スマイリングがこれまで伝えてきたのが、「食べられない・眠れない・目を離せない」という付き添い生活の現実です。
今回の調査では、睡眠や食事、入浴など、生活環境の一部には改善の兆しが見られました。
●睡眠
「熟睡感がない」と回答した人は、
2022年:85.4% → 2025年:80.0%(5.4ポイント改善)
それでも、約8割が十分な睡眠を取れていない状況です。
さらに、「日中に横になって休める場所がない」と答えた人も75.5%にのぼりました。
●食事
「病院食の提供がない」と回答した人は、
2022年:84.1% → 2025年:80.2%(3.9ポイント改善)
一方で、付き添い家族の約3割は1日2食以下。
その理由として最も多かったのは「食べる時間がなかった」で66.6%、さらに「節約するために食費を削った」も43.0%にのぼりました。
●入浴
入浴については、今回の調査で比較的大きな改善が見られました。
「ほぼ毎日入浴できる」と回答した人は、
2022年:61.6% → 2025年:70.0%(8.4ポイント増加)
少しずつ、付き添い家族が過ごす環境は変わり始めています。ただし、「改善した」ことと「十分になった」ことは同じではありません。
生活環境は前進している。でも、まだ「安心して付き添える」環境には届いていません。
POINT③
その結果、付き添い家族の体調はどうなっている?
→約6割が体調を崩すも、家族自身が休める仕組みは不十分

見過ごせないのが、付き添い家族自身の健康です。
「付き添い中に体調を崩した経験がある」
2022年:51.3% → 2025年:58.9%(7.6ポイント増加)
また、82.6%が「体調不良時にも十分なサポートを受けられなかった」と回答しました。
なぜ、体調が悪くても休めないのでしょうか。
その背景には、
「代わりに付き添ってくれる人がいない」
「子どもを残して休むことができない」
といった事情があります。
子どもの治療を支えるためにも、家族自身が休める仕組みが必要です。
POINT④
付き添いは、家計にも影響する
→2拠点生活は家計を圧迫し約8割が経済的に不安。長期の付添いは仕事への影響も。

付き添いの負担は、身体的なものだけではありません。病院で過ごすためには、食費や交通費、宿泊費などの出費が発生します。
さらに、付き添いのために仕事を休んだり、勤務時間を調整したり、場合によっては仕事を辞めたりすることもあります。
今回の調査では、78.1%が「経済的な不安を感じている」と回答しました。
なかでも「とても感じている」と回答した人は、2022年:31.0%→2025年:39.7%(8.7ポイント増加)
物価上昇が続くなか、付き添い生活にかかる費用も家族の負担となっています。
たとえば、付き添い生活の中で「飲食費を削る」と回答した人は74.3%。「洗濯の回数を減らす」44.3%、「テレビを見ない」54.8%など、さまざまな節約をしていることもわかりました。
仕事への影響も深刻です。
2025年は、
・仕事を辞めた(退職):12.8%
・休職した:9.1%
となっており、いずれも2022年より増加しています。
子どもの入院が長引けば長引くほど、「子どものそばにいたい」という思いと、「仕事を続けなければ生活できない」という現実の間で、家族が難しい選択を迫られることになります。
少しずつ変わってきた。でも、まだ「安心して付き添える」には届いていない

「付き添い白書2025」から見えてきたのは、付き添い環境は少しずつ、でも着実に、変わってきているということです。
制度や病院の環境は少しずつ動き始めていますが、その変化を、家族一人ひとりが「安心して付き添えるようになった」と実感できるところまでは、まだ届いていません。
子どもの入院中、家族がそばにいることには大きな意味があります。
だからこそ、「付き添うこと」そのものをなくすのではなく、付き添いたい人が、無理なく付き添える。
そして、
付き添うことが難しい人も、「離れていても大丈夫」と思える。
そんな環境をつくっていくことが大切なのではないでしょうか。
キープ・スマイリングは、「安心して付き添える、安心して離れられる」環境の実現に向けて、付き添い家族への生活支援だけでなく、病院の環境改善や調査・啓発、政策提言にも取り組んでいます。
「付き添い白書2025」が、今の状況を知り、子どもと家族にとってよりよい入院環境を一緒に考えるきっかけになれば幸いです。
【調査概要】
調査対象:入院中の子どもに付き添った経験のある家族1,198名
調査時期:2025年11月~2026年1月
調査主体:認定NPO法人キープ・スマイリング
※本記事では「付き添い白書2025」より、主に付き添い経験者1,198名を対象とした調査結果を紹介しています。



