「入院中の子どもの家族の生活と支援に関する実態調査」調査背景と共同代表メッセージ
病気の子どもに安心して付き添える世界をともに作っていきましょう
子どもの入院に付き添う家族に対する研究や支援にそれぞれ取り組んできた【 聖路加国際大学大学院小児看護学 】と【NPO法人キープ・ママ・スマイリング】は 、このほど「付き添い経験者の”声”で病気の子どもの家族へのケアを変えるプロジェクト」を共同で立ち上げました。
子どもの入院は、家族全体の生活に影響します。お母さんは子どもに付き添い、病院に泊まり込むことも多く、睡 眠や食事の困難さにより体調を崩すことは珍しくありません。長期入院になった場合は、経済的負担も大きいため、 お父さんは仕事を休めず 、付き添い看護と仕事の両立を余儀なくされます。また、家で留守番をしているきょうだいも親に甘えたいのに我慢を強いられます。 共同プロジェクトでは、研究活動を基盤に、このような付き添い生活の大変さを少しでも解消し、お母さんやお父さんが入院中の子どもに安心して向き合えるよう、また子どもが入院中であってもその家族らしく暮らしていけるよう、 付き添い家族に対する支援のあり方を考え 「子どもと家族中心のケア」を実現するために国や社会に積極的に提言してまいります。 そして、研究的側面からほとんど明らかにされてこなかっ た付き添い家族の声、その生活と支援の実態について全国大規模調査を実施することにいたしました。私たちは、この調査を課題解決に向けた最初の大切な一歩であると位置づけています 。ぜひ調査にご協力いただき、あなたの「付き添い経験」をお聞かせください。一つひとつの声は小さくても、たくさんの声が集まることによって付き添いの過酷な環境を変えていく大きな力になります。病気の子どもに安心して付き添える世界を、ともに作っていきましょう。
「付き添い経験者の”声〟で病気の子どもの家族へのケアを変えるプロジェクト」共同代表者からのメッセージ
当プロジェクトは(聖路加国際大学大学院 小児看護学 教授)と光原ゆき(NPO法人キープ・ママ・スマイリング理事長)が、共同代表で立ち上げました。
子どもと家族中心のケア実現に向けて
小林京子(聖路加国際大学大学院 小児看護学 教授)
小児看護学には「子どもと家族中心のケア」という 考え方があります。これは一人ひとりの子どもと家族の状況を踏まえたうえで、その願いを尊重し、パートナーシップのもと、適切なケアを提供するというもの です。しかし、看護師・研究者として小児看護に携わる中、付き添いや面会に関して子どもと家族中心のケアを実践することの困難さを感じていました。 そこで、2013年に全国の医療機関を対象に家族の付き添い・面会の現状について調査を行ったところ、この背景には看護師不足や体制・設備の不備など制度上の問題があることが浮かび上がってきました。そして、制度上の問題を解決しないかぎり、子どもと家族中心のケアを実現することは難しいとの思いに至りました。 付き添いにかかわる制度上の問題を立体的に把握し、よりよい支援体制を構築するには、医療側だけでなく当事者である付き添い経験者への調査が欠かせ ません。子どもと家族中心のケアの実現に向けて、みなさんの「声」をどうかお聞かせください。
付き添い家族の現状を社会に伝えたい
光原ゆき(NPO法人キープ・ママ・スマイリング理事長)
2009年、初めての出産と同時に病児の母となりました。いくつもの病院で付き添い入院をするうちに 疲れ果て、いつしか笑顔が消えていきました。このとき、私を救ってくれたのが病院の近くの飲食店から病棟に届けてもらった温かいお弁当です。そのおいしさもさることながら、飲食店主の優しい気持ちに心が癒されました。こうして私は自分と同じ境遇の付き添いママ を” 栄養満点のおいしい食事 “で 応援したいと 2014年から東京都内のファミリーハウスや医療機関で食事を提供する活動を行ってきました。 一方で、付き添いママを取り巻く問題は食事だけではありません。そこで、 2019年に子どもの入院に付き添う家族の生活実態を明らかにするためにウェブ調査を実施し、全国から200名余りの回答をいただきました。「この切実な声を社会に広く伝え、過酷 な付き添い生活の改善に生かしたい」と考えたこと が共同調査の出発点です。私たち病気の子どもを抱える家族が安心して笑顔で暮らせる社会を実現するために調査へのご協力をお願いいたします。