付き添ってもらうことは
入院している子どもの権利です
子どもの入院の“付き添い(※)”において、私たちが大事にしているのは、「入院中の子どもが、いつでも親と一緒に過ごすことのできる入院環境を保障されていること」です。なぜなら、それが病気の子どもにとって大切な権利だと考えるからです。
(※付き添い…家族が入院中の子どもに付き添って看病を続けること。小児病棟に泊まり込む「付き添い入院」と自宅やホテル、家族滞在施設から通って看病する「面会」があります。)
病院のこどもヨーロッパ協会(European Association for Children in Hospital:EACH)は、1988年に合意された『病院のこども憲章』において「病院にいる子どもたちは、親または親の代わりになる人にいつでも付き添ってもらえる権利を有する」ということを定めています。
日本小児科学会においてもこの憲章を参考に2022年に「医療における子ども憲章」を策定し、「病院などで親や大切な人といっしょにいる権利」を明記しています。
(日本小児科学会ホームページより)
親が安心して付き添えない現状は、子どもの早い回復を脅かします
私たちも、親が付き添うことは病気の子どもの早い回復、そして成長・発達の過程において重要なことであると捉えています。具合が悪く心細いときに、親が近くにいてくれる安心と嬉しさは何にも変えがたいものです。さまざまな事情で家族に付き添ってもらえない子どもの中には寂しさに耐えかね、つらくてご飯を食べられなくなる子どもが少なくないと聞きます。
子どものきもち
一方で、「付き添いの現状」でも述べているように、小児病棟における生活環境は劣悪で、家族は身体的にも精神的にも経済的にも疲弊を極めています。その原因の一つは、現行制度では禁じられている「看護要員の代替または看護力を補充するような状況」が常態化していることです。この実態は私たちが実施した大規模調査(※)によって明らかになりました。
※…「入院中の子どもに付き添う家族の生活実態調査2022」
また、制度上付き添いは「任意」とされているのに親に選択権がないことも私たちの大規模調査から明らかになっています。「希望する・しない以前に付き添いが必須だった」と答えた人が7割に上る一方で、泊まり込みの付き添いを願い出ても、病院のルールによって禁止されている小児病棟もあります。私たちは、家族がこうした状況に置かれているのは親の尊厳が守られていないことに等しいと受け止めています。
親のきもち
“子どもまんなか”の入院環境を実現するために
そもそも親が安心して付き添える環境に置かれていないのは、病気の子どもの権利を侵害することに直結します。前述したEACHの『病院のこども憲章』では、親に宿泊設備を提供することや付き添いのために経済的損失を被るべきではないことなどが明記されており、家族が安心して付き添える環境が医療機関はもとより社会で整備されています。
私たちは、グローバルスタンダードである“子どもまんなか”の入院環境を実現するために、次のような「付き添いの世界」を目指しています。
すなわち、付き添いの選択権は、医療機関ではなく子どもと家族にあること。家族が付き添う場合は安心して付き添える生活環境が保障されていること。
そして、きょうだい児が親と触れ合いたいときにいつでも触れ合えるインフラなどの整備がされていること。
家族が付き添えない場合は安心して医療者にまかせられる医療体制が確保されており、入院児が親と触れ合いたいときにいつでも触れ合えるインフラなどの整備がされていること。
多くの当事者の声をもとに、私たちはこんな付き添いの理想を描きました。
そして、家族を支えることは、きょうだい児を含む子どもたちを支えることに他なりません。私たちは、このことを強く胸に刻み、2つのミッションを掲げて、日々の支援活動に取り組んでいます。
- 生活支援を通して今まさに過酷な付き添いで困っている子どもとその家族のセーフティネットとなること
- 当事者の声を社会に届け、国や小児医療関係者との対話を重ね、付き添い環境を改善する仕組みづくりに貢献すること
2については、調査レポート・政策提言などの最新情報がこちらに掲載されています。
国、医療機関、企業、家族、そして私たちNPO団体…
それぞれにしかできないことがあります。
「子どもの幸せ」をまんなかに、
利害関係を超えて手を取り合い、
ワンチームとして
互いへの感謝とリスペクトの気持ちを原動力に
付き添いを取り巻く環境をよりよくしていきたい。
それが、私たちの願いです。
(イラスト協力:ひいらぎ舎)
子どもと家族の笑顔が守られ、安心して子育てができる日本へ。
ぜひ「Smile Keepers」の一員になって、私たちと一緒に実現してください。