それは、ある日突然始まるー
「付き添い」という過酷な毎日
厚生労働省の患者調査(令和4年)によると、入院する子ども(0~14歳)の数は年間2万2,400人。この数は入院患者全体の2%に過ぎませんが、子どもの入院に伴う家族の負担がとても大きいことは、ほとんど知られていません。
私たちは3600人以上の当事者の協力を得て「入院中の子どもに付き添う家族の生活実態調査2022」を行いました。その結果、付き添い家族の負担が身体的にも精神的にも経済的にもとても大きいことがわかりました。そして、こうした負担の主因として、以前から指摘されていた「労力提供型の付き添い」が常態化していることも明らかになりました。
付き添い者の8~9割は、食事介助、排泄ケア、清潔ケア、服薬、見守り、寝かしつけ、遊び、精神的支援など多岐にわたる世話やケアを担っており、1日あたり6時間以上世話やケアに時間を費やした人は全体の8割に上りました。
※労力提供型の付き添い…家族の付き添いで禁止されている看護師や看護補助者の代わりにケアを行ったり手伝ったりすること。
付き添い生活実態調査より
2022年11月~12月実施 有効回答者数 3,643人
対象:2018年1月~2022年12月の5年間に0~17歳の子どもの入院に付き添っていた人
体調について | 体調を崩したことがある人 51.3% |
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睡眠について | 熟睡感がない人 85.4% 寝床は子どもと同じベッド 51.8% 簡易ベッド 37.4% |
食について | 食事の調達場所「主に院内のコンビニや売店」 65.1% |
付き添い中の世話や ケアについて |
1日のうちに子どもの世話やケアに費やした時間 「21~24時間」が最も多く 25.5% 6時間以上は全体の 80.9% |
「面会」に通う親にも大変さが。
かさむ交通費、移動による疲労、幼子を病室に一人残すつらさ
子どもの入院に伴う付き添いの形態は2種類あります。一つは家族が小児病棟に24時間泊り込んで付き添うもので、俗に「付き添い入院」と呼ばれます。もう一つは病室には泊まり込まず、自宅やファミリーハウスから通って付き添うもので「面会」と呼ばれています。
この形態は病院によって異なり、一般的に大学病院や総合病院では「付き添い入院」であることが、子ども病院では「面会」であることが多いです。
「付き添い入院」については、上記で示したような食事・睡眠環境・入浴環境といった泊まり込みならではの生活の困難さがあります。一方で、面会もまた、付き添い入院とは違った大変さがあります。
付き添い生活実態調査より
2022年11月~12月実施 有効回答者数 3,643 人
対象:2018年1月~2022年12月の5年間に0~17歳の子どもの入院に付き添っていた人
自宅から病院までの所要時間 | 「1~2時間未満」 20.5% 「2~4時間未満」 7.2% 自宅から病院まで1時間以上時間がかかる人を合わせると全体の3分の1近く |
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面会のための交通費 (往復1回あたり) |
「1000~3000円未満」 25.5% 「3000~5000円未満」 7.7% 「5000以上」 9.9% |
付き添い生活の中で 節約していたこと |
面会の回数を減らす 2.3% |
小児がんや心臓病などの重い病気は、質の高い医療を効率的に提供するために医療スタッフや設備が整った拠点病院に患児を集めることが医療政策的に行われており、自宅から遠く離れた病院で治療を受けるのが一般的になってきています。
そのため、片道2〜3時間かけて面会に通うご家族も存在します。
遠方からの面会で日々かさむ交通費、移動による疲労…。ときには泣いている幼い我が子に後ろ髪を引かれつつ、ひとり寝させなくてはならない心理的なつらさもあります。また、経済的負担から、面会の回数を減らすご家族が存在することも実態調査から見えました。
病気で苦しい思いをしているのに、親に付き添ってもらえず、さらに面会にも来てもらえない子どもたちがこの社会には存在しています。そして、面会に通い続けなければならない家族にもまた、公的な支援はほぼありません。
「労力提供型の付き添い」から見える
小児医療の厳しい現状
なぜ、看護師や看護補助者の代わりに家族が子どもの世話をする「労力提供型の付き添い」が発生してしまうのでしょうか?
実は、さまざまな看護研究により小児のケアは成人よりも何倍も手間がかかることがわかっています。にもかかわらず、国から医療機関に支払われる診療報酬は成人と同額です。また、令和6年度の診療報酬改定においてようやく新設されましたが、それまで小児病棟では看護補助者の診療報酬は認められていませんでした。そのため、看護師や看護補助者の手がまったく足りず、親に付き添って世話やケアを手伝ってもらわなければ看護が成り立たないのです。
私たちのもとには、「声をかけるのがためらわれるほど、看護師さんは忙しく立ち働いており、これ以上サポートを求められない気持ちになる」という声も多数寄せられています。
「労力提供型付き添い」を解消し、入院中の子どもとその家族が安心して療養生活を送るためには、看護師・看護補助者をはじめとするマンパワーの充足が欠かせません。そのための財源を確保することが喫緊の課題であり、それは医療機関の努力だけではどうしようもできないことなのです。
子どもの突然の入院はどの子にも起こり得ます。だからこそ、安心して付き添える・任せられる入院環境を含め、みんな(社会)で小児医療を支える仕組みをつくることが大切だと考えています。
子どもと家族の笑顔が守られ、安心して子育てができる日本へ。
ぜひ「Smile Keepers」の一員になって私たちと一緒に実現してください。